今日も一日が終わった。重い荷物を肩にかけて寮に戻りドアの前に立つ。
鍵が掛かっていなければオートのドアは事も無げに開くはず。
しかし、ドアは固く閉じたままだった。同居人が帰っていない証拠だ。
金髪の少年―――クラウドは、黙って懐からカードキーを取り出すとリーダーに通した。
カードリーダーが無機質な電子音を立て、ドアは音も無く開いた。
クラウドは軽く溜め息をつくと荷物を床に置き、ベッドに腰掛けた。
時計を見やる。今日は訓練に続いて、警備の見まわりの当番だったから自分の帰りも決して早くは無かった。
もう時計の短針は真上に近いところをさしている。
にも関わらず同居人は姿どころかこの部屋にいた気配さえない。
クラウドはベッドに寝そべった。
もう慣れてきたつもりだったし、わかっていたつもりだった。
彼にはもちろん自分以外の友人とも付き合いがあるし、女性との付き合いだって少なくない。
自分ばかりにかまっているわけにはいかない事だって良く分っている。
けれど、時々「自分はいったい彼にとって何なのだろう」という考えがクラウドの頭をよぎる。
彼は好きだと言ってくれた。大切な存在だと言ってくれた。それだけで十分なはずだろう。
なのに自分だけにかまっていて欲しいなんてただのわがままだ。そんなエゴイストのような考えを抱く自分が嫌になる。
そして自分ばかりが彼に依存しているようで、なんだか悔しくもあるし情けなくもある。
そんな風に寝そべりながらとりとめもない事を考えていると自然に瞼が重くなってきて…クラウドが眠りについた頃に同居人はそっと帰ってくるのだ。
折角眠りに就いたクラウドを起こさないように足音を忍ばせてベッドに近寄ると軽く髪を撫でて、簡素なキッチンへ向かう。
けれど、クラウドが起きている時間に帰らなかった次の朝だけは遅刻常習犯の同居人は習慣に反して早く起きる。
出勤前の短い時間でも2人で過ごす時間を持つために。彼自慢のコーヒーを入れ、わずかな時間では有るけれど、ゆったりとした時間を過ごす。
クラウドは気づいていないけれど、同居人の「彼」も十分にクラウドに依存しているのだ。
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