12:Machine
コツ、コツ、コツ。
薄暗い街に軍靴の足音が響く。
独特のこの音は、神羅軍の中でも上級の兵士…ソルジャーの軍靴の靴音だった。
束ねた黒髪の毛先が無造作に跳ねる。
薄闇に、魔晄の瞳が独特の色を映し出す。
ゴミをあさる猫と、見回りの一般兵が1人と、彼…ザックス以外に動くものの気配はない。
兵士は彼を見ると姿勢を正しぴっと敬礼した。彼は軽く右手を上げて応ずる。
コツ、コツ、コツ。
ほんの少し霧がかかっている。
朝靄、という奴だろうか。いずれ日が高くなるまでには消えてしまうだろう。
辺りがだんだんと薄明るくなってくる。
摩天楼に陽の光が当たる。生まれたばかりの太陽のような強い橙色の光。
物音ひとつなかった街が息づいてくる。
ザックスは何かに気づいたようにふっと顔を上げた。
鳴動。
低電力状態に陥っていた機械達が一斉に動き出す。
午前六時。
彼の歩いていた裏路地が、一瞬にして機械の駆動音に包み込まれる。
歯車がせわしなく動く音、時折混じる金属音。
この街は機械によって生かされている。
靴音は機械の音にかき消されて聞こえなくなった。
靴音は消えたまま、ザックスはそのまま路地の向こうへと消えていった。
夜明けは好き。
04/08/11
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