08:A Gambling

 

「…は?」

クラウドは突然の事に思わず聞き返してしまった。

「だからぁ、やっぱ賭けるものがないと盛り上がんないッショ」

ザックスはチェス盤に駒を並べながら言った。

「賭けるもの…ったって…」

クラウドは困ったように頭を掻く。

暇つぶしにチェスをやろうと言いだしたのは自分だが、賭け事になるなんて??

「賭けるもの…」

無意味だとわかってはいてもクラウドは口の中でその言葉をもごもごと反芻させた。

同時に頭を巡らす。何か、賭けるようなもの…チョコレート?酒?明日の昼食?

「クラウドが決めらんないなら俺が決めちゃうぜ?」

「ザックスは何を賭けるか決まったのか?」

ポーンを並べ終わるとザックスは頷いた。

「まあな」

ザックスの口に咥えた煙草から紫煙が立ち昇る。

「何を賭けるんだ?」

「俺が負けたらクラウドが欲しがってたこの間のシルバーのブレス、買ってやるよ」

クラウドはその答えに驚愕した。

「え!あれ、結構高かった…」

クラウドの言葉を遮るようにザックスはにっと笑った。

「俺チェス得意だからさ。勝つ自信あるって」

「で、でも…」

クラウドはますます頭を悩ませた。ちょっと仕掛けた勝負がそこまで大事になるなんて。

あれだけ高いものに見合うものを賭けなくては…でもそんなもの、思いつかない。

そんなクラウドの考えを見越したように、ザックスは人の悪い笑みを浮かべた。

「あるじゃん、賭けるもの」

「?ザックス、何か欲しいものあるのか?」

ザックスはクラウドの耳元に唇を寄せると囁いた。

「クラウドちゃんのカ・ラ・ダv」

クラウドの顔が瞬時に赤くなる。

「ばっ…」

ザックスの頬を叩こうとした平手はあっけなくかわされた。

ザックスは灰皿で煙草をもみ消すと、テーブルに頬杖をつく。

「いーじゃん、その方が勝負に真剣味が出るだろ〜?何、それともクラウド、勝つ自信ねーの?」

その言葉にかっとなったクラウドは言い返す。

「ば、ばーか、ザックスなんかに負ける訳ないだろ!」

まさに売り言葉に買い言葉。負けず嫌いのクラウドのプライドを刺激するのに、その一言は十分すぎた。

「よし、じゃキマリだな♪」

クラウドは手早く白の駒を並べ始めた。

チェスは白が先手。そして、このテのゲームは先手の方が圧倒的に有利だ。

『大丈夫、俺だってチェスはかなり得意だし… 負ける訳ない!』

 

 

しばらく時間がたった。

兵士の宿舎のある個室に、カツン、カツンと駒を進める音だけが響いた。

そして、最後に…

「はい、チェックメイト」

カツン…と黒のクイーンの駒が置かれ、ザックスはチェックメイトを宣言した。

「ちょっと待て!まだ…」

真剣に考えるクラウドにザックスはひらひらと手を振る。

「はいはい、クラウドの負けだって。いいか、キングがこっちに逃げると、これに取られるだろ?でもこっちに逃げるとこれに取られる…んで…」

懇切丁寧にザックスは解説を始める。

クラウドもわかっていた。けれど素直に負けを認めたくはない。なぜならクラウドの賭けたものは…

「…っつーわけで、俺の勝ち」

手短に解説を終えると、ザックスは微笑んだ。

「だからクラウドちゃんをいただきますv」

「なっ…」

瞬時にソファに押し倒される。

「あっ…やめろ…この、色魔!」

「けど負けは負け♪」

観念したようにクラウドは溜息をついた。

 

「…こんな賭けなんかしなくたって、俺はザックスのものだよっ…」

 


賭けといったらチェス 「チェスをして勝ったんだよ父さん…!」(JOJO)

03/12/04

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