06:Protect

 

みゃう、みゃう、とか細く呼ぶ泣き声がする。

探し当てると、村はずれの木が茂ったところにそいつはいた。

箱に入った一匹の子猫。

少年は持っていた木の枝を捨ててその猫を抱きかかえると、村の方に引き返していった。

 

少年は村にたった一軒の雑貨屋でミルクとビスケットを買うと店の石段に腰掛けた。

「ほら、ザックス。この皿を使えよ」

事情を聞いた店の親父が少年に小さな皿を渡す。

「サンキュ、おやっさん」

少年は礼を言って受け取るとその小さな皿にミルクを注いで、ビスケットを浸した。

別なビスケットをもう一枚袋から取り出して、自分の口に咥える。

ふやけて柔らかくなったビスケットを猫に与えながら、雑貨屋に買い物に来る村人達に少年は何度も尋ねた。

「おばさん、この猫誰のか知らない?」

「さあ…知らないねえ」

「じいさんは?」

「ちょっとわからんのう」

村の誰に聞いても、そんな猫は知らないといった。

おそらく別な町から来た奴がこの村を見てこれ幸いと捨てていったんだろう。

猫は、ゴミじゃない。生きている存在なんだ。

やがて日も落ちた頃少年がふと気づくと、猫は少年の膝の上で寝息を立てていた。

膝に猫のぬくもりが感じられて、少年は猫がいとおしくて堪らなくなった。

少年はビスケットをポケットに突っ込むと猫を抱き、ミルクの皿を持って家に帰った。

 

何日かが過ぎた。子猫は食事を取る量が少なく、日に日にやせ細っていった。

寒い晩の事だった。少年は夜通しミルクを温めて見守ったが、その猫は朝には冷たくなっていた。

猫の遺骸を川岸に埋めながら、少年は黙って大粒の涙を零した。

いつの間にかそばの石に腰掛けていた老婆がその様子を見てぼそりと呟いた。

「弱い事は仕方のない事なんじゃよ、ザックス…弱い者はどうしたって弱い―――

じゃが、弱い事は悪いことだとはわしは思わんのじゃ。弱くたって生きておる…

守られて生きていたんじゃ。お前は猫を精一杯守った。けれど、駄目だった…それは、仕方のない事なんじゃ」

老婆のしわがれた手が、少年のつんつんとはねた黒髪をくしゃっと撫でる。

少年はぎゅっと拳を握り締めた。

「…ばーさん…俺は…いつだってどんな時だって、弱い奴を守れる力のある奴になりたいよ…」

 

 

数年後、少年はソルジャーになる。

 

 

 


ザックスがソルジャーになった動機ってなんだろうと思って書いた

03/11/30

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