04:Soldier Zacks

 

「侵入者、逃げました!」

「バイク及びトラックを盗み、窓から飛び出してハイウェイを逃走中」

 

「そのまま追え。…いや、モーターボールを出撃させろ」

ルーファウスはヘリコプターからの指示を一通り終えると無線を置き、傍らの女性をちらりと見た。

ウルフショートの銀髪で、淡い橙と魔晄の瞳の、オッドアイの麗人は閉じていた目を開くと気だるげにルーファウスを見やった。

女性の脇には一振りの長剣が立てかけられている。

眼下のハイウェイをトラックと一台のバイク、そしてそれを追うように神羅の兵士達がバイクで追撃している。

トラックを守りながら傍らでバイクを操る金髪の青年の腕前はなかなかなものだ。

ルーファウスはクッと笑うとまた傍らの女性を見る。

「バイクでビルの窓を突き破ってハイウェイに飛び移った、か…随分な無茶をする男だな。…数年前にもそんな連中が居たか」

「……」

女性はうるさそうに目を擦った。

 

 

 

「侵入者、いません!見失いました!」

「何をしている!さっさと探せ!!」

オペレーション・ルームの無線にハイデッカーの激が飛ぶ。

セキュリティの網をかいくぐって進入したテロリスト達は機密事項のパス及びデータファイルの保存してあるディスクを盗んで行方をくらました。

ビルから外に出た形跡はない。どこかに潜んでいるのだ。

入り口という入り口は兵士で固めてある。あとは犯人をあぶりだすだけだ。

その切羽詰った状況下、犯人集団は思いがけない行動に出た。

事もあろうに軍のジープを乗っ取って玄関に構えた兵士の一団に突っ込んだのだ。

そして運の悪い事に、そのジープにはいくつかの散弾銃やライフル、手榴弾などのテロリストに格好の武器が積んであった。

テロリストは思い切りアクセルをふかし、思いさま加速してそのまま何人かの兵士を事も無げに轢き、正面突破逃走を試みた。

一見無謀とも見えるこの賭けは成功し、集団はハイウェイに乗って逃走した。

「何をしている!追え!追わんか〜!」

ハイデッカーは唾を飛ばして怒鳴る。隊長の指示のもと、ソルジャーを含めた兵士達がバイクやジープで出撃しようとしていた。

その中にザックスもいた。彼はバイクの運転にも、戦闘にも自信はあった。

感覚を確かめるように神羅製のバイク、ハーディ・ディトナに跨り、ハンドルに手をかける。

隣のバイクには銀髪でオッドアイの女性が跨っていた。ウルフショートの銀髪に、透き通るような白い肌、端正な顔…

細い手足で、一見少年のようにも見える彼女はソルジャーの制服を纏っていなければそれとわからないような女性だった。

「ハル、お前も出撃か?」

ザックスはアクセルをふかした。ハルは黙って頷く。

その間にも次々とバイクが出撃していく。

「さて、俺らも行くか」

ザックスが行こうとした瞬間にハルが傍らで呟く。

「奴らも必死だ。普通に追ったんじゃ追いつく訳ないさ」

ハルはいきなりターンすると思いきりアクセルをふかしバイクで階段を駆け上がった。

「ハ、ハル!?何やって… …!」

言いかけて、ザックスもはっと気づくと同じようにアクセルをふかし階段を駆け上がる。

ハルのバイクはそのまま一直線に硝子の壁に突っ込むと、派手な音を立てて硝子を突き破った。

きらきらと硝子の破片が舞い散る。

そのままの勢いでハイウェイに着地し、テールランプを点滅させて前を走るテロリストのジープを追う。

「うっわ…女とは思えねえな、あいつは」

可愛い顔して、とひとりごちると同様にしてビルから飛び降りたザックスはハルのテールランプとその先のジープを追った。

 

敵を突き放してすっかり油断していたテロリストは思いもかけない2人の追撃を受けた。

闇雲に銃を乱射し、ソルジャー2人の進行を妨げようとする。

ザックスは煽るようにターンをかけながら、巧みにジープとの距離を詰めていく。

「くっそォ!」

手榴弾のピンが抜かれ、眼前に白い光が閃いた。

ザックスは辛うじてよけたものの、減速したおかげでジープから引き離される。

「もうちょっと間合いを詰めねーと剣じゃどうにもならねー…ハル!何とかなんねーのかよ!」

「…魔法力を収束するには速度が速すぎるわ。集中できない」

無愛想に答えたが、目はジープから離さない。あれこれと考えをめぐらしているようだ。

「いざとなったらディスクの奪還はあきらめてハイウェイから突き落とすか?」

ザックスは軽く溜息をつくとまた飛んできた手榴弾をハンドルを切ってかわす。

「軍用ジープとディトナじゃパワー差は目に見えてる…こちらが突き落とされるのは必至」

ハルは暫く間をおくと呟いた。

「手柄は貴方に譲る。巻き込まれて事故るなよ」

「はぁ?」

ザックスはハルの発言の意図がさっぱりわからなかった。

「剣が届くようにしてやるってのさ。加速!」

ハルの掛け声と同時に2人は火がついたように加速する。

限界まで距離を詰めて、テロリストの攻撃よりも早くハルは愛用の長剣をジープに向かって投げつけた。

鋭い切っ先がジープのタイヤを切り裂く。

「!」

ジープはスピンして2台のハーディ・ディトナに接触しかける。

ハルは剣を投げつけると同時に減速し、ジープの巻き添えを避けて停車した。

ザックスはディトナを破棄し、ひらりと軽い身のこなしでジープの屋根に飛び乗る。

振り落とされないようにジープの屋根につかまり、やり過ごす。

ややあってジープは回転をとめ、停止した。

「いったいなんだったんだ… …神羅の奴らは!?」

テロリストは武器を構え車外に飛び出す。

少し離れたところに停車しているハルの姿が見える。そしてジープに弾かれ道の脇に突っ込んで炎を上げているもう一台のバイクも。

テロリストの一人が叫んだ。

「や、やった…ひとり巻き込まれてくたばりやがった!あとはあの女を始末すれば…」

銃の照準が一斉にハルに向けられるが、ハルは動じない。

ザックスはテロリストの注意がハルに向かった瞬間を狙ってひらりとジープの屋根から飛び降りた。

油断していたテロリストはようやくザックスの気配に気づく。

「てめぇ…!」

相手が引き金を引くより早く、ザックスは呟いた。

「悪いな…これも仕事だ」

ザックスのバスターソードが一閃した。

 

 

 

「あのルートが逃げるのに最も有利だと知っていたようだ…あのクラウドとかいう元ソルジャー、誰かさんの武勇伝を聞いていたかな?」

ルーファウスは皮肉そうな笑みを見せた。ハルは横目でルーファウスを見ると軽く溜息をついた。

「…腐れ縁の貴方の頼みとはいえ護衛なんて引き受けるんじゃなかった…無駄口叩いていないでさっさと次の仕事に行かないと、時間の無駄じゃないの?」

「まあそう言うな…見ものだぞ、これからの展開は… 過去の武勇伝のようにうまく行くかな?」

ルーファウスは眼下のハイウェイを見下ろした。

ハルは呆れたようにルーファウスの背に視線を投げかけたが、再び溜息をつくと目を閉じた。

 

 


回想の中でしかザックスは出てきませんが バイクに乗って誰かと共闘するザックスが書きたかった

03/10/22

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