MAKE A CAKE FOR YOU★

　

崩壊後のマジックキングダム。復興が続くこの街には何故か沢山の双子がいた。

以前この街で極秘に行われていた計画の、残り香達…

自然の摂理を捻じ曲げて人為的に双子を作り、より強力な術士を得ていた。

けれど数多くの犠牲の上でやっと地獄は崩壊・封印され、やっと穏やかな日々が訪れていた。

さて、今日は聖誕祭前夜。

ブルーはそのたくさんの双子のこども達のためにケーキを作っていた。

彼自身は甘いものは好まなかったが、手先が器用で几帳面な彼は菓子を作るのは上手かった。

その間、彼の双子の弟であるルージュがこども達の面倒を見ているというわけだ。

復興中のこの都市ではケーキなど売る店も無くまだ子ども達の口に入るのは難しいから、せめて聖なるお祭りの今夜だけはこども達に楽しい聖夜を迎えてほしいと思うばかり。

「ブルー、ケーキ出来た？」

ルージュがひょこっと厨房に顔を出し、そのままてくてくとスポンジの置かれたテーブルの側に歩み寄る。

「あ、もう台は作れたんだね。後は飾るだけだ。ブルーは器用だからきっと可愛いのが出来るよね」

「…お前、子供をほっといて良いのか」

ブルーは呆れたように呟いた。ルージュはにこっと笑うと言う。

「寝てるよ。今はお昼寝」

王国の術士達は交代でこどもの面倒を看ていたが、とりわけこども達に惜しみなく優しくするルージュと

たまに気まぐれのように不器用な優しさを見せるブルーにこども達は懐いていた。

「で、僕もお手伝いしようかなぁ〜と思って来た訳ｖ」

「手伝う事など無い」

冷たくあしらうブルーの背中にルージュは寄りかかると頬をむくれさせる。

「ブルーさんはいつでも冷たいのでございます…っ…」

「寄るな。莫迦が感染(うつ)る」

しれっと言うとブルーは丁寧に砂糖の量を測り、生クリームを泡立て始める。

ルージュは背中から離れると上目でブルーを見た。

「なんだよっ…　…じゃあいいよ…手伝わなくていいなら邪魔しようっ」

無視するブルーの横に回るとルージュはたった今泡立て終わったばかりの生クリームに指を入れた。

「おい…俺の邪魔をするならともかくそれは子供が食べるものだからな」

ブルーは手際よく袋にクリームを詰めて絞り出しながら言った。

ルージュは一口舐めるとブルーの利き手側にそっと近づき、わざとぶつかる。

「！」

絞り出したばかりのクリームにブルーの手が触れ、ブルーの細い指先にクリームがべっとりとついてしまう。

綺麗に飾られたクリームは崩れ、後から乗せる予定の苺を乗せたくらいではごまかせないほどブルーの指に削り取られてしまった。

「ったく…これじゃやり直しだ」

不機嫌そうにゴムベラを探すブルーの手をぱっと取るとルージュはぺろりと舐めた。

「っおい」

突然の事に手を振り払う事も忘れたが、ブルーはなんとか抗議の声を上げた。

ルージュはくすっと笑うと言った。

「だめだよブルー、どうせ君は甘いもの嫌いだから味見もしないでデコレーションはじめたんでしょ？

ちゃんと味を見てからじゃなきゃダメだよ♪」

そのままブルーの顎に手を添えルージュはその唇に口付ける。

「…っ…」

ブルーは反射的に目を閉じた。

ルージュが深く口付け、舌を絡ませるとふわっと甘いクリームの味が口の中に広がる。

しばらくして、つうと細い銀糸を引いて唇が離れた。

ブルーは肩で息をしながら手の甲で唇を拭った。

「で？お味は？」

くすくすと笑いながらルージュが問う。

ブルーは答えずにルージュをきっと睨むと手を洗ってまた作業を再開した。頬が僅かに紅く染まっている。

「僕はもうちょっと甘くても良いと思うんだけどな〜。砂糖足してもう一回味を見てみる？」

「もういい…十分だ！」

ブルーは頬を染めながら怒り口調で返すと作業を続けた。

ルージュはくすくすと笑いながらこどもたちの寝ている部屋に戻っていった。

その後姿を見送りながらブルーはひとりごちた。

「あいつの腹黒い本性を子供等にバラしてやりたいっ…！」

　

外では雪が降り始めた。聖なる夜は、まだこれから。

　

HAPPY CHIRISTMAS…

設定的にはパラレルです。崩壊後に2人とも生きてるし。それ以前にこどもの面倒を見るブルーとかありえないかなとか思ったんですが、
劇中でもこどもを護るために地獄に行ってますし別に良いかと思ってそのまま。あんまりこども好きそうじゃないけど…
ブルーだけ「子供」って言ってますけど、ニュアンスの違いを表現しようと思っただけで特に意味はなし。
「いつでも冷たいのでございます」はフルバより。

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