やらないで後悔するよりやって後悔する方がいい、って言ったのは誰だったっけ

 

でも、私にはどっちの道が正しかったかなんてわからなかったし、今更選びようもない

私は結局「やらないで後悔する」道を選んだ

 

Like That Morning

 

「はは、それがもう若くないって事かしら」

 

 

エレノアは木の葉の舞い散るレンガの道を眺めながらぼんやりと物思いにふけった

彼女がそうしているとそっと好物のミルクココアを運んでくれたあの銀髪のヴィジランツは今傍らにいない――――

 

“ミルクココアが好きなんて小さな子どもみたいですね”

エレノアの方がはるかに年上なのに 時々そうやって甘えさせてくれた

 

あの子と組んだのはほんの気まぐれ

偶然でしかない

けれど 年の割りにいくらか大人びていた彼が 弟のようで可愛くて

 

 

ぱらぱらと雨が降り出す

初秋のラウプホルツの雨は冷たい

窓の外で人々が慌しく動き始めた

軒先の洗濯物をしまう人

遊んでいた子どもたちも一斉に家に引っ込む

 

街の賑わいは打って変わって雨の静寂

 

 

いつからだろう 彼の存在が単なる仲間や弟でなくなったのは

あの子の純粋な瞳に惹かれた 今となっては私はもう持ち合わせていなくて それゆえに焦がれるもの

そして あの子にとっても私が 単なる相棒や仲間でなくなったことにも  

 

 

ぱらぱらと降っていたにわか雨は しとしとと降る霧雨に変わった

ちょうど眠ったままの彼を宿に置いて出てきた 薄暗い朝のような

深い 深い    霧雨

 

 

今までの私なら 自分も好きで相手も好きで それに何をためらっただろう

けれど 私は もう

 

 

考えたくなかった どうやっても埋められない年の差 

自分の力の衰えなんて認めたくないのに 否が応でも実感する

いつまで私のそばにいてくれる?私はいつまで貴方のそばにいられる?

「年の離れすぎた恋人」 なんて貴方に恥をかかせたくない

いつか同じくらいの年の可愛い女の子と一緒になって 私から離れていったりしたら

なんて 湿っぽく色々考えて

 

 

もしあなたが 好きだといってくれても 

先に私は老いていくのだから 若い貴方の枷になりたくない

 

 

…そんな風に正当化して 自己満足の優しさを押し付けて

結局貴方を一人ぼっちで置いてきた

貴方のためだとかいって  本当は自分が傷つくのが怖かっただけのくせに

 

そんな風に『らしく』なくなるほど 好きだったくせに

 

 

 

冷え込んだ室内にもたらされたのは

宿屋の女将からの 温かいコーヒー

柔らかく甘いミルクココアとは対照的に ほろ苦く切ない「大人」の味

 

霧雨を見つめながら口に運んだコーヒーは 後悔で少し痛んだ胸に 

ほんの少ししょっぱい味とともに 温かく落ちていった

 


エレノアがちょっと弱気すぎるかなぁとか反省したり 少しだけ氷雨とリンク

06/08/30

BACK

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送