Warm And Silent Life

 

本を読みかけてソファで眠ってしまっているデンゼルとマリンにブランケットをかけてやる。

午後2時。風もなくよい天気だ。

 

下の階ではティファがランチメニューの片づけをしている音が僅かにする。

俺はマリンとデンゼルを起こさないように足音を消しながら、簡素なキッチンへ向かう。

戸棚の上に置いてあるコーヒーメーカーはリーブからの贈り物だ。

 

「ひとりで店を切り盛りしている忙しいティファさんと、仕事で出かけることの多いクラウドさん、

のんびりできることなんて少ないでしょう?お2人の時間の取れるときは、これで手軽に美味しく、珈琲を飲んでください」

 

情けないことに料理に関してまったくティファにまかせっきりの俺だが、少なくともこいつで珈琲を入れることくらいはできる。

 

今日はデリバリーサービスは休業。セブンスヘブンのランチは14時までだ。片付けは14時半には終わる。

今珈琲を落とせば、ティファが上がってくる頃には飲み頃の珈琲が出来上がっている。

2人分よる少し多めの珈琲豆を挽き、フィルターに入れる。

あとは水を入れてスイッチを押すだけだ。朱色の電源ランプが点くと、僅かな駆動音を立ててコーヒーメーカーが起動した。

2人分のカップとソーサーを戸棚から取り出し、お湯を沸かしてそれらを温める準備をする。

ガラスで出来たデカンタに、とぽとぽと落ちてくる琥珀色の液体を眺めながら、ぼんやりと物思いにふける。

 

罪は消せやしないし、過去も切り落とすことは出来ない。

「思い出にはならない」と言って去ったあいつの影も、いまだに消えてはいない。

 

でもなぜだろう、今は怖いくらいに平穏だ。

ずっと求めていた場所。求めていたけれど、後ろめたくて、そして失うのが怖くて得られなかった、温かく静かな場所。

 

珈琲の温かい香りが立ち上る。

 

メテオ落下とそのゴタゴタで身寄りを失ったデンゼル。

神羅によって親を奪われ、今は義父であるバレットと離れて暮らすマリン。

そして、幼くして故郷を失ったティファと、俺。

 

家族を失った4人が集まって、また家族のような空間を作り上げる。

温かくて幸せで、だけどそれまでの過程にいた人々を想うと少し後ろめたい。

 

琥珀色の液体がデカンタを満たしていく。カップを温めなければ、火を止め、沸騰した湯にカップをつける。

 

でも、その場所を大切にしようと思えるようになったのは、きっと彼女の目を見たから。

『もう大丈夫、だね…』

 

 

 

 

エッジの空は蒼く澄んでいる。珈琲の最後の一滴が、デカンタの水面にぽとっと落ちて波紋を作った。

 

 

 


07/04/04

大分尻切れですが リハビリと言うことでひとつ…

クラウドの話が書きたいなぁと思い

 

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