どうかそんな切ない顔をしないで。
俺がそばにいますから。
どうか。
ちいさなこいのうた。
恋に破れた彼女。彼女は恋多く、魅力ある女性なのにどういうわけかいつも失敗ばかり。
「もっとイイ男が他にいるわ」なんて言いながらも本当は傷ついていて。
飲めるふりをしているけど本当はあまり強くない酒を飲むペースはいつもより少し早く、そしてほんの少しだけ多く。
いつの間にかカウンターで寝入ってしまって。
「エレノアさん」
声をかけても目覚めない。軽くため息が出てしまった。そのため息がどんな気持ちからかはわからない、が。
強がりな彼女の伏せられた長い睫毛から零れ落ちる一粒の涙。
ぎゅっと心臓をつかまれたような思いになる。
どうして俺じゃダメなんですか。
堪らなくなってきゅっと唇を噛む。きっとこの世で一番情けない顔をしているに違いない。
叶わない恋をしてしまった。
「よう、坊主。またお前の若い母ちゃんつぶれちまったのかい。お前も大変だなあ」
恰幅のいい酔っ払いが絡んでくる。世間から見たら自分と彼女の関係はそんな風で。
到底叶うはずのない苦しい恋。
強がっているのにずいぶんと細い肩にそっと上着をかける。
「…ん…」
薄目を開けたエレノアの瞳にサルゴンが映る。
「…あんたは優しいね」
あたしの惚れた男もあんたみたいだったらよかったのに、そうつぶやいてまた聞こえてきたのは小さな寝息。
一瞬にかけられた言葉、少しココロが解きほぐされる。
どうか俺に気づいてください。あなたのそばにいますから。
06/02/20
結局叶うのか叶わないのか自分の中で結論は出ていないこの2人
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