ふと思った。「ああ、私ひとりなんだ」、って。
alone
みんなみんな、いなくなってしまった。
南の砦での悲劇からしばらく経って――――もうすでに歯車は動き始めている。
故郷には見知った顔もいなくなった。
貴方も、幼馴染のフリンもとうにいない。
ケルヴィンは何かと忙しそうに政務に追われていて、もう別世界の人のようだった。
「ひとりになってしまったのね」
ケルヴィンが疎遠だとか、そんなのは多分自分へのいいわけに過ぎない。
彼は、私が会って話したいと言えば喜んでいくらでも時間を作ってくれるに違いない。
昔話に花を咲かせるひと時も悪くないのかもしれないわ。
…けれど。
『ポタリ』
本当は貴方がいなくなった時に、私は独りぼっちになってしまったのよ。
動乱の時代に、身一つで貴方の許に来て。
…あなたの見せる背を、時々振り返る笑顔を追ってこの地にやってきて。
それからどのくらいの時間が経ったのか…
貴方は南の砦に散り。
それから私は一人ぼっち。
嬉しい時に一緒に喜んでくれるあなたは、悲しい時に不器用に慰めてくれるあなたは、寂しい時に寄り添ってくれるあなたは。
もうどこにもいないのね。
『ポタリ』
抉られた心の痛みからか、止めようがないほど広がる空虚感からか。
『ポタリ』
涙が止まらない。
「…私、また泣いてるよ」
私が泣いていても、もうあなたの手は、私の涙を拭ってはくれない。
もう、2度と――――――……
孤独ということ。
04/05/10
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