親愛なる青薔薇様
あなたの首を頂きに参りました…

 

異端の花

 

「綺麗な薔薇ね。ここの館の主は良い趣味を持ってるみたい」

エミリアは門に絡みつくように咲いた薔薇の香りを嗅ぎながら言った。

アニーはひょいとその門の更に奥を覗きこんで呟いた。

「奥にあんなに咲いてる。中に入れないかな?」

「妖魔の君…魅惑の君オルロワージュの居城だ。人間に門を開けてくれやしないよ」

アセルスは複雑な表情で城を見上げた。暗い空に更に沈むように細く高い尖塔が聳え立つ。

むせかえるように甘くきつい薔薇の香りが漂う。

「凄い。いろんな色の薔薇があるのね」

エミリアは感心したように城門のあたりを見回す。

白薔薇が多かったが、紅薔薇、黄薔薇、黒薔薇と色とりどりの薔薇が咲き乱れていた。

「薔薇が散る季節になったら寂しくなりそうね」

アニーがふと呟くと白薔薇姫は首を振った。

「この城の薔薇は決して絶える事はありません。次々と新しい薔薇が蕾をつけるのです」

「へぇ…不思議ね」

ルージュはそんな女性達のやりとりを聞きながら少し離れたところで薔薇に見入っていた。

幾重にも重なる形のよい花びら。神の創りたもうた造形。

ふと足元に目を落とすと見なれない花びらが落ちているのが目に入った。

ルージュは拾い上げると城から漏れ出でる光にそっと透かしてみた。

青い薔薇の花びら。

そんなルージュの様子に気付いた白薔薇姫がルージュに話しかけた。

「青薔薇<ブルー・ローズ>ですね」

「本当。ここに咲いてるわ。初めて見た」

エミリアはその蒼い薔薇を見てほうと溜息をついた。

「ブルーローズって言えば有り得ないものの例えだけど本当に在るんだね」

アニーのその薔薇を見やる。

その美しい花は人の心を狂わせると それを危惧した神が隠してしまったと言われる幻の花。

「本来は存在しないものだよ」

オルロワージュの強い妖力の影響かも知れない、とアセルスは物珍しげに薔薇を眺めた。

 

蒼い薔薇。

存在し得ないもの。

 

凛とした姿。

…異端の花。

無数に纏った棘は他を拒絶しているように見えて。

 

それは誰かを思い起こさせる。

 

美しい姿に鋭い棘を持つ兄<ブルー>を。

 

ルージュは思わずその薔薇を手に取った。

棘が指先に刺さり、つぅと赤い血が流れる。

「あ…」

「ルージュ、大丈夫?!」

アセルスが見せろ、と言った風に腕を引っ張る。

「大した事無いよ、大丈夫」

アセルスに笑顔を向けるとルージュは再び薔薇に目を向けた。

「…君も同じように、僕を拒絶するんだね」

やはりマジックキングダムの双子として生まれた自分達は相容れない者同士なのか。

あの王国に生まれさえしなければ自分は今兄の傍らに居たかもしれない。

しかしそれはあくまで「例えば」の話。

本当は殺し合いたくは無かったけれど。

「…でも、僕は負けない。絶対に」

ルージュは薔薇の首元を引きちぎった。

蒼い花弁がはらはらと舞い散る。

「ルージュ!?」

彼の今まで見せた事の無い様子と表情に一同は動揺した。

けれど次の瞬間、ルージュはいつもの様に微笑を浮かべた表情に戻った。

「…ごめん、何でもないよ。…行こうか」

対決の時が近い事をルージュは感じ取った。

負けるわけには行かない。

 

 

この散った薔薇が来たる時の貴方の姿。

 


女性向けにしようかどうしようか迷った。

02/06/21

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