急げ急げ 女王様がお怒りだ

トランプ兵士がみんな首をはねられる前に 早くお城へ帰らなきゃ

 

 

ブルーはいつものように部屋の照明を落とし代わりにベッドサイドの照明をつけ、王国の教典を開いた。

意味はない、幼い頃より叩き込まれた習慣だ。旅に出ても一日とか欠かさずこの教典は開いている。

資質を集めるためとはいえ王国から出ればしがらみから少しは解き放たれると思っていたが、

いざリージョンを出ても結局王国の習慣だとかに縛られている自分が滑稽で、少し悲しくて少し可笑しかった。

隣の部屋で仲間は既に寝入っているのか、物音ひとつしない。

解いた長い金髪がぱらりと、古びた羊皮紙の中の鮮やかな御名なき三女神の絵の上に零れる。

ばかばかしい、女神だなんだと崇めているこいつらこそが王国の病理の本(もと)なんじゃあないのか?

女神のために歌い、女神のために殺しあう魔術師達。それが望んだ運命であろうとなかろうと。

「で、君はそれを望むの?」

いつの間にかベッドの傍らにルージュが腰掛けている。

ブルーは別段驚かない。彼の、いや彼らの持つ術、「ゲート」を持ってすれば造作もないこと。

「……」

「いつもそうやって答えないんだね」

ルージュはそう言いながらブルーの耳元に軽く口付ける、ブルーは少し嫌そうな顔をしてそっぽを向いた。

「希望は希望だ。現実とは違う」

「そうかな?」

ルージュは緩慢な動作でブルーの顎に手をあて、親指で薄い唇をなぞる。

僅かに眉が不快そうに歪むが、今度は振り解かなかった。

そのままぐっと肩を押し、ルージュはブルーをベッドの上に倒してその上に乗る。

そしてそのまま左胸を掴むように手を当てた。早くなった鼓動がルージュの掌に伝わる。

「あはは、君の心臓、まるでウサギみたいに早いんだね」

「…ッ」

お前のせいだ、と言いかけて飲み込んだ。それをいったら墓穴を掘るばかりである。

「寂しがり屋のウサギさん、構ってもらえなきゃ死んじゃうくせに」

くすくすと笑いながら挑発的に唇をブルーのそれに寄せる、舌でぺろりと舐めあげる。

細い指がブルーの肌をなぞる。その感覚はくすぐったいような痺れるようななんともいえない感覚で。

「ッあ…!」

「声、出すと隣のお仲間起きちゃうよ?」

「…く、っ…」

意地をつつくような挑発、それでも。

 

 

優しく握られた、暖かい手が愛おしかった。

 

 

「…ねえ、僕はずっと君の事追ってるのに、それでも君は理不尽なハートの女王様に従うの?

時計片手にせかせかと走り回って、女王のために働くの?

いいじゃない、寂しくて死んでしまいそうならずっと僕のそばにいれば。未来永劫愛してあげるのに」

 

 

目が覚めるとカーテンの向こうは光が差していた。隣にルージュの姿はなかった。

床に教典がゴミみたいに落ちている。これが「破戒」って奴か、とブルーは自嘲気味に笑った。

 

「白兎だって従いたくて従ってるわけじゃないさ。ただ、莫迦な白兎にはそうするしかわからないんだ」

ブルーはひとりごちると、くしゃっと髪をかきあげた。

 

 


きゆね様 リクエストありがとうございました

ちょっと無理がありますがアリスインワンダーランドになぞらえて

うさぎは寂しいと死ぬって 俗説ですかねえ

05/01/17

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