キョウセイテキ アマイ オモテナシ。

★★★

 

「TRICK OR TREAT」

この言葉が意味する事は「悪戯か、もてなしか」…

転じて「お菓子をくれないと悪戯するぞ」という可愛らしい脅し文句となる。

 

冬も近づこうかというある夕方。

ブルーは冷え込む夕方に暖を取りながら本を読んでいた。

彼は書物を読む時間が好きだった。誰にも邪魔されず、好きなだけ知識を詰め込める時間なのだ。

傍らに置いた星型の砂糖菓子――――金平糖、と言うらしいがこの際彼にとって菓子の名などどうでも良かった――――を時折口に運びながら。

彼は甘いものをあまり好まなかったが、この小さな菓子はべったりとした甘さがないので口寂しい時によく一粒、口に放り込んでは食べていた。

のんびりと過ごせる週末の夕方がブルーは結構好きだった。

 

軽くドアをノックする音が、そんな静かな時間の流れる部屋に響いた。

次の瞬間ドアが開き、妙な格好をした双子の弟のルージュがそこに立っていた。

妙な格好――と言うのは、普段は好んで着ないような…黒いローブにつば広のとんがり帽子を被っているのだ。

橙色のかぼちゃに装飾を施した灯篭を片手に持ち、ルージュは言った。

「TRICK OR TREAT?」

弟が自分とは違う性格の持ち主だと言う事は熟知していたのでブルーはあくまで静かに言った。

「何の真似だ?」

ルージュは一瞬怪訝そうな顔をするとブルーに歩み寄り言った。

「やだなあ、ブルーまさか今日が何の日か知らないっていうんじゃ…」

「……」

両者軽い沈黙の後にルージュは小さく溜息をついた。

「…知らないんだね」

ルージュはつかつかとブルーの傍らまで足を進めると口を開いた。

「今日はお化けのお祭りさ。こういう風に仮装をしてきた人には「TRICK OR TREAT」…悪戯を許すか、もてなしをするか、どちらかしなくちゃならないんだよ」

「何だ、あれの事か。…というか、お前はそんな事をする年でもないだろう。あれは子供の祭りのはずだ。悪ふざけなら他所でやれ」

ブルーはハロウィンと言う祭りの事は知っていたが自分にはさして関係のないことなので頭からすっかり消去されていた。

ルージュの存在などまるでないかのようにまた本に目を落とすブルーに、ルージュは唇を尖らせた。

「僕は悪戯するか、もてなしを受けるまで帰らないよ」

そう言うとルージュは革張りのソファに腰掛けたブルーの膝の上に乗った。ちょうど本を読む邪魔になる体勢だ。

ブルーは本に手近なしおりを挟むと本を閉じ、本の角で軽くルージュの頭を叩く。

「あのな…悪戯と嫌がらせは違うぞ」

「ん〜?」

ルージュは人の悪い笑みを浮かべるとブルーを見下ろした。

「悪戯はこれからするんだよ♪」

そう言うとがばっとブルーを押し倒す。

「ば、バカッ!」

ブルーは瞬時に耳まで赤くなり、ルージュの肩を押し戻そうと必死になる。

その手をうまくかわし、ルージュはブルーの頬に口付けた。

「ハロウィンの客人をもてなさないで、冷たい態度を取るからだよね〜」

「わ、わかった!もてなすから、だから…!」

「手遅れ♪」

ブルーはとっさに金平糖の瓶に手を伸ばすと宝石のようなその砂糖菓子を一粒、ルージュの唇の隙間に押し込んだ。

ルージュはそのブルーの指先を甘噛みすると舌先でぺろりと舐めた。それと同時にブルーの背に甘い痺れが伝う。

「コレ…いいね」

ブルーはルージュを膝の上に乗せたまま、ルージュにせがまれてもう一度、同じ事を繰り返す。

「最高の御もてなしかも」

意地の悪い笑みを浮かべるルージュにブルーは頬を染め、奥歯を噛み締めながら毒づいた。

 

「そのまま砂糖漬けにでもなれッ…!」

 


コスエロ?他力本願寺さんに嫁に行きました。

03/10/27

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