僕は「自殺」した。そう…他ならぬ君の手で。
自らの意志で、君の手によって…『自殺』したんだ。後悔はしていない。
僕は君が見えるけれど、君はもう僕が見えない。
互いに触れる事も出来ない。
それが僕には…酷く苦しいけれど。
僕が君を殺して生き延びるよりはこっちの方がずっと良い。
君を殺してしまったら…僕は生きてはいられない。きっと君の死を無駄にしてしまうだろうから。
僕達は何のために生きているのだろう。…生きてきたのだろう。
僕達に…何が知りえただろう。何が出来ただろう。
…聡明な君なら、もう気付いただろうね。
僕達は、王国の傀儡だった。
足に鎖が付けられているとも知らず、「籠の扉が開いた」「羽の枷が消えた」と喜んで旅に出て…
結局は王国の意のままに…僕達は犠牲とされていく運命<さだめ>。
もうどれだけ犠牲になったかすら判らないほどに命を吸って、今尚輝きを誇る僕達の故郷は…掘りかえせば真っ赤な血が溢れてくる。
僕達に自由なんて無かったんだね。そう…何一つ、自由と呼べるものなんて。
道具に自由なんて必要ない。僕達は王国のための道具なのだから。
そんな中で君という人間を愛する事、それ自体が叛逆とも言える行為だったのかもしれない。
僕達に与えられた時間は…僕の想いの全てを伝えるにはあまりにも短すぎた。
でも、これだけは信じてほしい。
例えその想いが王国に対する叛逆だったとしても…御名無き三女神の意志に背く事であったとしても。
僕の君を好きだという気持ちは間違いなく真実だった。
その気持ちを…どうかほんの少しでも疑わないで。
いつか…君は僕の事を忘れてしまうかもしれない。
けれど僕の言葉、想い…何か、何かほんのひとかけらでも良いから君の中に残せていますように。
僕という莫迦な男がいた事を。君を本当に愛していた男の事を。
大好きだよ、ブルー。
…ずっと、変わらない。
俺は莫迦だった。
俺は…俺自身に無償の想いを注いでくれるたったひとりの人間を失った。
俺自身の手で、躊躇いもなく殺したのだ。
失った時を取り戻す事など出来はしない…失った命を取り戻す事も。
最強の術師になる事ばかりを考えて、それ以上に大切なものが在る事さえ…失うまで気付かなかった。
心の無い傀儡達、犠牲(いけにえ)の人形達、心を抱いた異端者は神の怒りを受け死すべし
遺書という名の恋文。
02/11/16
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