「ふぅ…」

まだ雫の零れる髪を櫛で梳きながらルージュは窓の外を見た。

窓を開けると朝のひんやりした風が湯上りの肌に心地良い。

カーテンを開けると柔らかい光が部屋の中に差し込んだ。

「んん…」

声のする方を見るとブルーが光に背を向けるように寝返りを打っていた。

「ブルー、起きてよ。そんな格好で寝てると風邪引くよー?」

はだけた毛布から白い肩が覗いている。

少々低血圧ぎみな兄はそんな事にはお構いなしにまだ白いシーツに体を預けて眠っていた。

「ねえ、起きてよ」

疲れきっているのか、ルージュが肩を揺すってもブルーは一向に目を開かない。

「ブルーがそう言うつもりなら僕だって考えはあるからね」

そう言うが早いか、ルージュは寝ている兄の首に腕を回すと自分の唇に兄のそれを引き寄せた。

「何をする!!」

唇に触れる前にブルーはルージュの腕を振り払って飛び起きた。

「お姫様のお目覚め〜」

「…誰が姫だ」

ブルーは目をこすりながら不機嫌そうに聞き返した。

「眠り姫は王子のキスで目覚めるものだよ」

ルージュは悪びれもせずに言った。

「馬鹿な事を…」

「それより」

ルージュはブルーの頬に手を当てると親指でそっと唇を撫でた。

「やっぱり切ってるよ、唇。だから言ったのに…」

「いちいち覚えている訳無いだろう」

ブルーは普段は結い上げている長い金髪を鬱陶しげにかきあげた。

「…何だ」

ルージュの視線に気付いたブルーはベッドの上に半身を起こしたまま言った。

「…ブルー、カッコ良い」

「は?」

「今の髪をかきあげる動作、映画のワンシーンみたいだったよ。凄くカッコ良かった」

「……」

何と言ったらいいのやら、ブルーは困惑した。

――――敵わんな。

ブルーは軽く溜息をついた。

ルージュはその首元に顔を埋<うず>めると呟いた。

「カッコ良すぎて悔しいくらいだよ」

どうしてこんなに鼓動が高鳴るんだろう。

鏡を覗き込めば同じ顔が映るというのに。

「ブルー、ずるいよ」

きっと自分は兄に同じ気持ちを味あわせることなんて出来ないんだろう。

いつも僕ばかりドキドキしているんだ。

ルージュは拗ねたようなふりをして唇を噛んだ。

「唇を、切るぞ」

ルージュは、はっと顔を上げた。

「…なんてな」

ブルーはふっと笑った。

ルージュはじっと上目遣いでブルーを見た。

「…僕が、昨日の夜その後に言った言葉覚えてる?」

ブルーはルージュの方をまじまじと見つめた。

「…言ってみてよ」

それを聞くと、ブルーはルージュの手首を掴んでぐいっと引き寄せた。

「うわ!?」

ブルーの胸に倒れ込んだルージュの頬にブルーの長い金の髪が触れた。

ブルーはルージュの真紅の瞳を覗き込むと悪戯っぽく笑って言った。

「『愛してる』」

蒼い瞳に覗き込まれてルージュの顔にさっと赤みがさした。

「…!!」

ルージュはがばっと起きあがると左胸を押えた。

「…このまま、心臓止まっちゃったらブルーの所為だよっ!!」

「ははっ…!」

ブルーは愉快そうに笑うと再び髪をかきあげた。

 

「その前に、俺の心臓が止まるかもな」


バカップルくさい。

02/06/21

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