『帰ってくるから すぐ帰るから 心配ないよ』

 

098:An Epitaph

 

少し前にスラムで知り合った蒼い目の貴方。

 

初めて会ったのは7番街。映画館の前で花を売っていた時に声をかけてきた。

黒髪で背が高くて、私と目が合ってにっこりと笑った顔は端整で、優しげで。

瞳は不思議な蒼色に輝いてた…それは神羅カンパニーの精鋭戦士、ソルジャーだけが持つ魔晄の瞳。

でもその目はとってもまっすぐに、澄んだ湖みたいな蒼い瞳だった。

 

なんとなく、気があって。

 

彼は時々花を売っている私のところやスラムの教会に顔を出すようになった。

仕事でどこかへ行く時は必ず出立の前に私のところにやってきていた。

 

「明日から遠征で、暫く来れないかも。ちょっとだからさ、すぐ帰る」

恋人でもないのにね、と私は笑った。彼はそんな私の言葉に苦笑いを浮かべていた。

 

そんな事が何度もあったある日貴方はいつものようにやってきて、そして帰り際に言った。

「次の任務は結構でかい仕事なんだ。でもすぐ帰ってくるからさ」

何だか変な感じがした。いつも言ってる事と変わらないのにね。

悪い予感が頭の中をよぎって、不安になって教会の門から出て行こうとする彼の、ソルジャーの制服の裾を掴んだ。

彼は驚いたように振り返ると、私を見て困ったような笑顔を浮かべた。

「大丈夫だよ、すぐ戻る。絶対」

そう言って私の頭をふわっと大きな手で撫でて、彼は出て行った。

 

…絶対なんてどうして言えるの。

 

「…嘘つき」

彼はもうここに戻ってこない気がした。彼を行かせてはいけない。頭の中で警鐘が響いた。

今から追えば間に合う。彼を止められる。

 

…けれど私は行かなかった。

 

 

 

「…ごめんね」

 

 

 

 

 

暫くして、彼がもう亡き人になってしまった事がわかった。

そう、義母エルミナの夫が亡くなった時と同じように古代種である彼女は大切な人の死を星の声を聞いて感じ取ってしまった。

この時ほど、この古代種としての能力が悲しかったことはなかった。

彼の死が判らなければまだ、彼が生きて帰ってくるという希望を抱いて生きる事が出来たのに。

 

 

「ごめんね」

彼の死を知ったエアリスが、自宅の花畑の片隅にそっと作った小さな墓標。

エアリスはその小さな墓標の前に花を供えるとそっと祈りをささげた。

 

何となく、予感…した。

貴方の運命を変える事が出来なくてごめんなさい。貴方を嘘つきにしてしまってごめんなさい…

 

貴方の墓碑銘。それは彼女が小さな手で途方もない時間をかけて石に彫りこんだたった一言。

『I believed you,and I believe you(私は貴方を信じていました、そして今でも、信じています)』

 


「エアリスは赤の他人の死(エルミナの夫)がわかったのにザックスの死はわからなかったのか?」という疑問から。
最後の墓碑銘は「貴方が帰ってくるといった言葉を私は信じたのよ、結局貴方は帰っては来なかったけれどあなたの言葉に嘘はなかったと今でも信じているの」と言う意味。

04/04/11

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