068:A Corpse Of A Cicada

 

熱帯性の気候帯に属する村、ゴンガガ。

暑いところが苦手なレッドXIIIは、木陰でじっと休んでいた。

キーストーンの情報集めの最中に休息として立ち寄った村はよりにもよって彼の苦手な暑い村。

「あ〜あ、もう少し涼しいところを選んでくれたらいいのに…」

ジャイロを泊められるような浅瀬や浜辺のあるところは涼しい村からは遠い。

わかってはいるのだが、レッドは不満を零さずにはいられなかった。

「オイラの鼻が乾いちゃうよ〜…」

はっはっと口で息をしながら、レッドはひいやりとした木肌に擦り寄った。

「レッドー」

遠くから呼ぶ声がする。ぴくりと耳を動かし、顔を上げるとエアリスが手を振っていた。

エアリスはふわふわの巻き毛を揺らしながら小走りでレッドに近寄ってくると、小さな紙袋を見せる。

「えへへ、村の雑貨屋さんでアイス買ってきちゃった。一緒に食べよ?」

「ほ、本当に?あ、でもオイラだけ食べていいの?みんなのぶんは?」

エアリスは紙袋から丁寧にアイスクリームのカップを取り出しながら言った。

「だいじょぶよ、みんなにはちゃんとみんなの分渡してきたわ。これがレッドの分ね、はいっ」

エアリスはカップのふたを取るとレッドの前にアイスクリームを置いた。

甘いバニラとミルクの香りが、冷気を伴って立ち上る。

レッドはカップを前足で押さえてぺろりと舌でアイスクリームを舐めた。

エアリスも、自分の分のカップを開けると木のスプーンで白いアイスをすくって口に運ぶ。

口の中でふわっととけて冷たい感覚が喉に伝わる。同時に甘いバニラとミルクの味が口に広がった。

「んー、おいしvね、レッド?」

「うん、美味しいよ、ありがとうエアリス」

頭上からは降るような蝉しぐれ。

ふと、並んでアイスクリームを食べる2人の足元に蝉が一匹落ちてきた。

飛び立とうともしないし、鳴く事もしない。蝉の命の焔は尽きたのだった。

「…死んじゃったみたい。蝉は、長い間土の中にいるのに、ほんの少ししか生きていられないのよね」

エアリスがポツリと呟いた。

レッドはアイスを舐めながらしばらく返答しあぐねていたが、ふと、こんな一言を漏らした。

「…なんだか蝉は可哀想だよね。不公平だよ。蝉よりも人間の方が長く生きられて、じっちゃんなんか130歳にもなってる。

オイラなんかそれよりももっと長く生きられるのに蝉は本当に少ししか生きられないんだ。不公平だよね」

レッドはエアリスを見上げたが彼女はそれを肯定しなかった。

「そうかな?本当に不公平…なのかな?あのね、私は、蝉も私達も生きている長さは違うけど、自分の生きている時間を一生懸命生きている事は同じだと思うの。

だから、蝉はちょびっとしか生きられないからって可哀想って事は無いと思うな」

レッドは首を傾げた。

「そう?」

エアリスは頷く。そして、レッドの鼻を優しく撫でた。

「長く生きられるか生きられないか…そういう事じゃなくて、一生懸命生きた、って事が大事だと思うの。

生きる長さは違っても、私も蝉もレッドもブーゲンハーゲン様も、みんな一生懸命生きているから…可哀想、って事はないと思うわ」

 

 

水の祭壇で花のような少女は散華し…仲間達は悲嘆にくれ、涙を零した。

「エアリスっ…かわいそう…かわいそうだよっ…」

涙と鼻水でぐしゃぐしゃのユフィはか細い声で苦しそうにそう漏らした。

レッドはそれを黙って聞き、エアリスの冷たい頬をぺろっと舐めた。

別れの挨拶。

そして、忘らるる都に向かい、星に向かい…遠く、高く遠吠えをした。

どうか、彼女の尊い魂を、星が、ライフストリームが受け入れてくれるよう。

『エアリスは可哀想じゃない…一生懸命生きたんだ。そのエアリスの想いを、オイラ達が受け継いでかなきゃいけない。

エアリス、オイラ頑張るよ。エアリスがいなくなったのは悲しいけど、オイラも、一生懸命生きられるよう頑張るよ…!』

レッドは目に溜まった雫を振り払った。涙は雫となって水の祭壇にゆらめき、音もなく吸い込まれていった。

 


レッドとエアリスは結構いいコンビだと思います。関係ないけどヴィンセントとティファもいい感じです。
ヴィンティとか言う言葉が頭をよぎっちゃったのは内緒です。クラティが好きです。

04/01/18

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