055;The Gravel Kingdom

 

黄金色の砂。絶える事の無い機械の駆動音。

昼はひどく暑く夜は息も凍るほどに冷え込む。

その厳しい世界に立つ王国を支えてきた若き王。

 

「エドガー様。例の者が見えております」

「…来たか。通してくれ」

エドガーが立ち上がると一人の青年が伝達の兵士と入れ違いに入ってくる。

頭にバンダナを巻いたその青年は、チャラチャラと腰に巻いたベルトにぶら下がったチェーンを揺らしながら玉座に近寄った。

「私がフィガロ国王、エドガー・ロニ・フィガロだ」

「俺はリターナーの一員、ロック・コール」

2人はどちらからでもなく握手をする。

「帝国と同盟まで結んでいるのに俺たちの組織と手を組みたがってるなんて」

ロックはぶっきらぼうに切り出した。

「おまけに国王って言うからには年寄りを想像していたけどこんなに若いとは、驚いた」

ロックの態度は一見ぶしつけにも取られそうな態度だったが、エドガーは気にせず笑う。

「ははは、確かにな。君が疑うのも無理は無いよ。別に好き好んで同盟を結んでいたわけじゃないさ。

先王が死んで、国力が不足していた時はこちらが不利だとわかっていても同盟を結ばざるを得なかった。

けれど、今は違う。国としても力がついてきたし、いい加減帝国にも嫌気が差してきた。

反撃のチャンスはそろそろめぐってきたな、と思ったわけだ」

ゆっくり首を振るとエドガーの細い金髪がさらりと零れた。日差しの強い砂漠で、彼が日から肌を守るために伸ばした髪。

「随分いろいろ喋るんだな…俺が仮に帝国のスパイだったらどうするんだ?」

ロックは呆れたように肩をすくめた。エドガーは王族らしく優雅に微笑した。

「まぁ、私も曲がりなりにも人の上に立つ者だ。少しは人を見る眼がある。君がそんな奴でない事くらいすぐにわかるさ」

「若いのに結構肝据わってるな、あんた。頭も切れるみたいだ」

ロックは少し感心した。

「若いといってももう27だけどな」

「俺と2つしか違わないのか…」

ロックが顎に手を当ててなにやら思案しているとエドガーが口を開いた。

「では君は29か?」

「…25だ」

「なるほど。年も近い事だし、なかなか君とは気が合いそうだよ」

エドガーが再び微笑する。その心からの一言に張り詰めていたロックの緊張感が僅かに緩んだ。

 

 

「第一印象はお互いを探り合ってるような感じだったな」

砂漠の夜は寒い。その分美しく輝く星をバルコニーから見上げながらロックは呟いた。

「…ああ、そうだな。まだお互いをお互いが信じきっていなかったんだから無理もないさ」

エドガーも同じ空を見上げながら返す。引き裂かれた世界でも相変わらず星はきらめいている。

「帝国と同盟なんか結んでる都市は、どこも帝国の言うなりだと思ってたから正直驚いた。

しかも、後から聞いたら17で国王になった、って。

そんな年で帝国と同盟結んで、しかもその時から反乱を企ててたなんて大したタマだよ、あんた」

まあな、とエドガーは呟くとくっと笑った。

「しかし、俺も君には驚いたよ。一介のトレジャーハンターが一国の王を前に物怖じもせずにずけずけ言ってきて。

おかげでリターナーはいい人材を持ってる、と思って本格的に手を組もうと思ったんだ」

「そりゃどーも。俺なりにあの時は緊張してたんだけどな」

ロックは小指で耳をかいた。

「まあ、間違いじゃなかったろう?リターナーとフィガロが手を組んだ事で、ほんの少しでも世界は動いた」

「いい方向なのか、悪い方向なのか、よくわかんないけどな」

ロックは少し自嘲気味に笑った。エドガーも釣られて笑ったが、すぐに真面目な顔に戻ると遠くを見つめて言う。

「いい結果だったと言えるようにしなければならない。そのためにも…最後の闘い、絶対に負けられない」

「世界中のレディが泣くからだろ?手の早いので有名などっかの王様が死んだら」

ロックの気の聞いた嫌味にエドガーは苦笑した。

「まあ、冗談は抜きにしてもだ。あんなのをのさばらせておいたら、俺の守るべき人にまで危険が及んじまう。今度こそ、絶対に守るんだ。…そのためにも」

ロックの決意にエドガーも頷いた。

「…負けられないな」

2人は顔をあわせてにっと笑った。

 

「じゃあ、コインで賭けでもするか?表が出たら俺たちの勝ち、裏が出たらヤツの勝ちだ」

「どーせ両表のコインなんだろ?」

「ははっ、ばれたか…」

 


エドガーとロックは結構気の合う友達みたいなものだったんじゃないかなあ。

04/01/11

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