039:An Omelet And Rice
人参、チキン、グリーンピースに玉葱…色んなものが詰まった紅いケチャップライスが中に入った不思議な卵焼き。
子供の頃は大好物で母さんが作ってくれるのを楽しみにしてた。
料理は苦手じゃないんだけど、得意でもない。無性に食べたくなってザックスが遠征に行っている間に作ってみたけどうまく作れなかった。
味はそれらしい味がしたけど、少し焦げたケチャップライスがうまく包めなくて薄焼き卵は破けてしまった。
意外にも器用なザックスに、『作ってくれ』なんて頼んだら子供っぽいってバカにされそうで、何となく言えなくて…そうこうしているうちに日は過ぎた。
ある日、ザックスがたくさんの卵を持って帰ってきた。
「…なに、その卵」
「もらったんだ」
ザックスはそれだけ言ってとりあえず卵を奥に運ぶと、簡素なキッチンの冷蔵庫を開けて頭をかいた。
「あ〜、入んねえや。どーしたらいいんだ」
冷蔵庫の中はミネラルウォーターやら酒やら食品やら色々が入っていて卵を並べて入れられそうな隙間はあまり無い。
「どこでそんなにもらったんだ?」
膨大な量…というほどでもないけど、紙袋に入った卵はざっと見たところで14、5個はあった。
「スラムで酔っ払ったおっさんにもらったんだけど…どうすりゃいいんだ、これ…」
「よく見ろよ。ここに卵のストッカーあるじゃん」
ドアポケットの卵ストッカーは空いていた。それでもそこには10個しか入らない。
「しょーがねーな…あと4つか…今日中に食っちまうしかねーな」
「全部ゆで卵とか俺はごめんだぞ…」
「そーだよな。俺もやだよ」
俺がそういうとザックスは苦笑いした。
「なんかまとめて卵使えるような料理あるか?」
ザックスの問いに反射的に言葉が出た。
「…オムライス」
こんな時でもないと「オムライス作ってくれ」とはいえないだろう。
一応卵料理だし、と思って言うだけは言ってみたら、ザックスは意外にも良い返事をした。
「あ、そうだよな。あれ卵いっぱい使った方が上手く出来るし。クラウド頭いいな」
ザックスはじゃれあうように俺の髪をくしゃっと撫でた。
そんなこんなでオムライスを作ることになった。
ザックスの手製のオムライスは母さんが作るのとは少し違ってて…具はキノコと玉葱とウインナーだけだ。
「俺の母親、こうやってよく作ってたんだよな」
ザックスは玉葱を刻みながら言う。
「俺のうちもだよ。でもザックスの家のとは大分違う」
「は?他にどーやって作るんだよ」
俺は冷蔵庫から人参とチキンとグリーンピースを取り出してきてまな板の上に置いた。
「これも入れるんだ」
「お、それうまそうじゃん。入れようぜ」
俺は笑顔で頷くと、人参の皮をむき始めた。
しばらくして…母さんの作り方と、ザックスの親御さんのレシピを混ぜた、新しいオムライスが出来上がった。
全く新しい具材だったけど、でもどこか懐かしい味がして。
「…おいしい」
「うん、うまい」
ザックスと向かい合って食べる夕食。
2人で作ったから美味しかったのかもしれない。
そして、2人で食べたから…なおさら美味しかったのかもしれない。
04/01/11
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