ねぇ、寂しい時は側にいてほしい。 勇気が欲しい時に手を繋いでいて欲しい…

 

034:Join Hands

 

一面の星空に不吉な色の隕石が浮かぶ。皆が寝静まった夜にクラウドは一人、眠れなくて甲板に出ていた。

クラウドはクレーターの中央でぽっかりと口を開けた洞穴…大空洞を飛空挺の甲板から見下ろしていた。

クレーター付近は強風が吹いている。クラウドの短い金髪が風に揺らめく。

明日いよいよ、あそこに乗り込むのだ。セフィロスとの闘い。

この感情は緊張?昂揚?あるいは…迷いなのかもしれない。

「祈りを…解き放たなくてはならない…そして全ての決着を」

自分を奮い立たせるように一人ごちる。切り裂くような勢いの風が音を立てる。

ふと、飛空挺内部に繋がるドアが開いた。

風にドアを持っていかれそうになって、ドアを開けた主は軽い叫び声をあげ慌ててドアノブを掴んだ。

「きゃっ!」

「ティファ?」

暗闇で顔はよく見えなかったが、風になびく長い髪と声でわかった。ティファだ。

「クラウド。ここに居たんだ」

風に流れる黒髪を押さえながらティファはクラウドに歩み寄り、横に並んだ。

いったん大空洞に視線を遣ってから、ティファはクラウドの顔を見た。

「クラウドがいないのに気づいてびっくりした。もしかして一人で行っちゃったのかなって思って」

「まさか」

クラウドは苦笑した。

「みんなで行こう、って今日言ったろ?」

「…うん」

ティファは頷いてまた大空洞に視線を向ける。

「あの中、どうなってるんだろうね。セフィロスはじっとメテオを待ってるのかな…」

「……」

「明日、いよいよセフィロスと戦うんだね」

ティファは手すりを掴んだ拳に僅かに力を入れた。

「…ああ」

クラウドは頷いた後、ティファの鳶色の瞳を覗いて問うた。

「不安?」

ティファは一瞬答えに迷ったようだったが、一呼吸置いてぽつりと言った。

「… …少し」

ティファは繕うように髪をかきあげた。

長い黒髪が風になびく。

「クラウドが側にいてくれるから、クラウドが一緒にいてくれるから…って思ってるの。でも、やっぱり…」

ティファはそう呟くと手すりからすっと手を離した。その手をクラウドはぎこちなく繋ぐ。

ティファも一瞬身体を硬くしたがすぐにその緊張はほどけていった。

つながれた掌から、互いのぬくもりが伝わってゆく。

「こうしてると、側にいるってわかるだろ?…ひとりじゃないって。大丈夫だ、ティファ」

「うん…うん」

ティファは頷いた。そして、空を見上げる。

今はメテオが空を覆っているけど、あの時と同じ星空。

村の給水塔で、クラウドは「困っている時は助けにいく」と約束してくれた。

そして、いつだってクラウドは、彼女を助けてくれた。今もこうして。

ティファの心に刺さっていた小さな「不安」という棘がすっと消えた。

「…ありがとう」

ティファは口の中で呟いた。

 

星空の下、2人はしばらく互いにじっと寄り添って、手を繋いでいた。


04/01/15

BACK

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送