今日は何かが変だ。

朝っぱらからレスリーが家を訪ねてきたと思ったら朝食のバターロールと一緒に外に行ってこいと放り出された。

そこへタイミング良くフリンとケルヴィンがやってきて俺はバターロールと一緒にいつも行っている洞窟に連れていかれた。

ケルヴィンは普段こんな所寄りつかないくせに。何かが変だ。何かが…

 

そして俺は重大な何かを忘れてる気がする。

 

 

「ソフィー様…ギュス、行っちゃいましたね」

レスリーは窓の外の視界から遠ざかって行く2人とそれに引き摺られるように連れて行かれるギュスターヴを見送った。

ソフィーは微笑んだ。

「フリンもケルヴィンも、上手くやってくれましたね。さぁ、準備に取りかかりましょう」

「でもソフィー様、私こういうのは作った事無くて…」

口元に手を当てるレスリーにソフィーは優しく語り掛けた。

「大丈夫ですよ、誰にでも出来ます。私も手伝いますから頑張りましょう?」

 

 

場所は変わって洞窟。

「一体なんで俺はこんなところで、しかもバターロール一つきりの朝食を摂らなきゃいけないんだ!?」

ギュスターヴは腑に落ちないといった顔でパンの最後の一口を口に放りこんだ。

「大体ケルヴィン!お前今日に限ってどうしてこんなところに来ようと言い出したんだ」

ギュスターヴの問いにケルヴィンは一瞬言葉に詰まる。

「そ、それは…」

「僕が誘ったんだよね、ケルヴィン」

すかさずフリンがフォローする。ケルヴィンはそれを聞くともっともらしく頷いた。

「…なんか企んでないか、お前ら?」

ギュスターヴは不審げに二人を見た。フリンもケルヴィンも明後日の方向を見て目を逸らしている。

「な、なんでもないぞ」

「何でもないよ、ギュス様。ほら、なんか今日は蹴飛ばせばきのこが泣いてくれそうな感じがするし」

きのこの涙を拾ったギュスターヴは誰も信じてくれないのでもう一度きのこを泣かせてみようと最近躍起になっていた。←笑

「代わりにお前を蹴飛ばしてやろうか?」

「うわぁぁ!やめてよギュス様〜」

 

その頃ギュスターヴの家ではレスリーが悪戦苦闘していた。

「ソフィー様…上手く出来ない…」

しょげるレスリーをソフィーが料理の手を止めて励ます。

「大丈夫。よく出来ているわ。それに大事なのは見た目じゃなくて心ですよ」

 

「まさか本当だとは思わなかったな」

ケルヴィンは自分の手のひらの上に乗ったきのこの涙をしげしげと眺めた。

「だから本当だって言っただろ。お前が信じなかっただけだ」

ギュスターヴはきのこの上に腰掛けて言った。

「あーそれにしても腹が減ったな。なぁ、そろそろ昼食を摂りに戻らないか?」

ギュスターヴの言葉にケルヴィンの顔色が変わる。

「ま、待て!まだ昼には早い!」

「んな事言ったって俺の朝食はパン1個だったんだぞ?」

「ギュス様、もう少し遊んで行こうよ〜」

フリンがギュスターヴの服の裾に捕まる。

「やめろ!服が伸びる!」

ギュスターヴはフリンを振り払うと二人を見た。

「…お前ら何か隠してないか?朝から様子が変だし…」

「お前な…少しは気づけ!」

ギュスターヴの前に立っていたケルヴィンが言った。

「あわわ、ケルヴィン、余計な事は…」

フリンが慌てて取り繕おうとする。

ギュスターヴは軽く溜め息をついた。

「何なんだお前らは!とりあえず俺は帰る!」

「待ってよ〜ギュス様〜」

駆け出したギュスターヴの後をケルヴィンとフリンが慌てて追った。

 

「あらあら。お帰りなさい」

ギュスターヴ、それと一足遅れて戻ってきたケルヴィンとフリンを出迎えたのはソフィーと、テーブルに並んだたくさんの料理。

ギュスターヴの後ろで息を切らしながらケルヴィンが呟く。

「今日の誕生日、お前はどうせ忘れてるだろうからこっそりパーティーの用意をして驚かせてやろうってソフィー様とレスリーが提案したんだ。

だからお前を引きとめてたのに、お前と言う奴は…」

ギュスターヴは目を丸くしてストンと椅子に腰掛けると言った。

「そうか…何か大事な事を忘れていると思ったら俺の誕生日か…」

「ギュス様誕生日おめでとー!」

フリンが手を叩く。

「さあ、レスリーも座って。昼食にしましょう」

 

しばらくして、ソフィーがケーキを持ってきた。ソフィーの得意のショートケーキだ。

グリューゲルに移り住んでから作り方を覚えたものだったが腕前も味もなかなかだった。

ギュスターヴは一口食べて呟いた。

「うん、うまい」

ソフィーはその様子を見てにっこりと笑った。

「良かったわ。今日のケーキはレスリーが作ったのよ」

ギュスターヴは驚いてレスリーとケーキを見比べた。

なるほど今日のケーキはちょっといびつだな、とは思ったが…。

「良かったわねレスリー」

「ふ、ふん。お前にしては上出来だ」

素直じゃないギュスターヴにフリンとケルヴィンの声がかかる。

「そんな事言ってもうギュス様2切目だよ」

「全くお前は素直じゃないな」

 

誕生日おめでとう、ギュス。貴方のために作った、とっておきのケーキ。

 

END


このギュス、ケル、レスリー、フリンこの4人のお話は書いたこと無かったので。
ギュスターヴとケルヴィンは名コンビだと思います。「変なのはお前だ、ケルヴィン」が好き。
そしてギュスとレスリーは似合いの2人ですな。ワイドを出る前の2人の会話とか、兄弟再会の時の2人の会話とかとても好き。
そしてギュスとフリンは名コンビ2。南の砦とか、ギュス12歳とか。

そしてケルヴィンとフリンは迷コンビ。何がイイってギュスは「ギュス様」なのにケルヴィンは「ケルヴィン」なところでしょう。仮にも貴族に向かって呼び捨てフリン。

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お題の由来。
本棚に入っていた雑誌の見出しに「とっておきのケーキ」って書いてあった。(爆)

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