…風邪引いた。

あたしは病気らしい病気も、怪我らしい怪我もした事ない健康優良児なのが自慢だったのに!

ティファが、あたしが口に咥えた体温計を見て呟く。

「結構熱あるわね〜…」

わかってる。頭は重いし身体は熱い。

「大方ハラでも出して寝てたんじゃねーのか」

シドの言葉に反論できない自分が憎い。

今回の風邪の原因はたぶんソレ。

そんな子供っぽい理由で風邪引いたなんてユフィちゃんのプライドがユルサナーイ!

とりあえず「仲間に伝染させないことが最重要」って事と、具合悪いあたしを乗り物に乗せておくのは可哀想だというティファの心遣いから

あたしはコスタ・デル・ソルにある別荘に隔離された。

看病についててくれるのは、ティファとクラウド。

ティファはともかく何でクラウド…って思ったけどまぁ素直に嬉しい。だから理由は深く追求しないでおいた。

「…医者に見せた方が良いんじゃないのか?こじれると大変だし…」

クラウドはあたしを心配したつもりなのかもしれないけど、逆効果。

あたしは病院も医者もキライだ。注射も薬もヤダ、とごねるあたしを見てクラウドは肩を竦めた。

「こんなの、寝てれば治るよッ!あたしは医者も注射も絶ーッ対やだかんね!」

ティファはあたしが高熱にうなされながらも必死で拒否するので折れた。やっぱティファは話がわかるよ、うん。

 

その後あたしはばったり寝ちゃって気がついたらもう日が暮れてた。

飛空挺から降りた時は太陽はまだ頭の上にあった気がしたのに、ずいぶん寝ちゃってたんだなあ。

でもおかげで少しだるさが抜けたかもしれない。

「ユフィ、起きたか」

何時の間にかクラウドが枕元に立ってた。

「うわ!?いつの間に!?」

「ずっといたけどな」

なるほど、向かいのベッドに本が置いてある。あそこに座ってクラウドはあたしの側につきながら向かいのベッドに腰掛けて本を読んでたんだ。

「ティファが夕食作ってくれたから、食べられるようなら食べてくれ」

そう言うとクラウドは半地下の調理場に向かって降りていった。

しばらくしてティファとクラウドが夕食を持って部屋に入ってくる。

ティファの作ってくれた夕食はチキンスープだった。2人の故郷、ニブルヘイムでは風邪を引くと必ずと言っていいほどこれを食べるらしい。

確かに美味しかったけど…ゼータクな話だけどあたしは物足りなかった。

さすがにウータイとニブルヘイムじゃ距離が離れすぎてる。食文化も全然違うのかもしれない。

あたしの故郷、ウータイじゃ風邪を引いたら食べるものは決まってる。梅干のお粥。

まだあたしがすっごく小さかった時でやっぱり風邪を引いた時、母さんか作ってくれて食べたお粥はすっごい美味しかった。

風邪を引いたら梅干お粥にウータイ特産のグリーンティー。あれを食べると治る気がする。でも無理なんだろうな…

そんなことを考えながらあたしはまた眠った。

 

…ら、案の定お粥の夢を見た。すっごく食べたい気持ちになったけど夢の中じゃ食べても味はない。

ってゆうか夢の中で何か食べると風邪を引くって近所のばーちゃんが言ってたっけ。

 

翌日、目を覚ますと時計の短針は1をさしてた。

「はぁ…も〜昼か…」

ずいぶんよく寝た気がする。ティファが氷枕を持って来てくれた。死んでるのかと疑ってしまうくらいあたしはよく寝てたらしい。

ティファの持ってきたドリンクを飲みながら、あたしはある事に気がついた。

「…れ?クラウドは?」

クラウドが、いない。昨日はずっとそばについててくれたのに―――

ティファが言うにはちょっと出かけた、って事だった。

温めかえしてもらったスープを少し飲んで、あたしはクラウドが帰ってくるのを待ってたけどいつの間にかまた眠ってしまった。

 

病気の日、ってのは一日がたつのがとても早い。寝てる時間ばっかだからだ。

また目を覚ますと今度はもう辺りが暗い。折角いい天気の一日だったのになんかもったいない気もした。

目を覚ますと今度はティファがあたしに付き添っていた。

スツールに腰掛けて雑誌をぱらぱらとめくっていたティファはあたしが起きたのに気づくとそっとあたしの額に手を当てた。

ティファの手は柔らかくて、そんな事を言ったら怒るかもしれないけど『お母さん』の手みたいであったかくて気持ちいい。

「大分下がったみたいね。夕食は食べられそう?」

あたしはこくりと頷いた。ティファは昨日のクラウドみたいに厨房に下りていってまた戻ってきた。

ティファと一緒に上ってきたクラウドの手には小さな鍋ののった盆。

クラウドが持っていた小さな鍋の中身を見てあたしは驚いた。

梅干のお粥。

心が読まれたのかと思ってあたしは反射的に胸を押さえた。

「な、なんであたしの食べたいものがわかったの!?」

クラウドは一呼吸置くと答えた。

「昨日夜中に呟いてたのが聞こえたから…」

もちろんあたしにそんな記憶はない。ってことは…寝言―――!? 自分の食い意地が恥ずかしくて顔から火が出そうだった。

それを聞いたクラウドが朝早くからハイウインドでウータイに行って作り方や材料を調達してきてくれたらしい。

あたしは一口食べて感激した。これがあたしが食べたかった味なんだ!

「俺が作ったから、不味いかもしれないけど…」

そんな事ない、凄い美味しい!ましてあたしのためにクラウドがわざわざ作ってくれたなんて!

…けど素直に感謝できなくてあたしに言えたのは一言だけだった。

「…別に、不味くなんかないよ」

「そっか、良かった」

そんな一言でもほっと胸をなでおろすクラウドを見てあたしは自分の天邪鬼が憎かった。

梅干のお粥のおかげだろう、翌日にはあたしの風邪もすっかり治っていた。

 

 

たまには風邪もいいかもしんない。

END


「風邪を引いた日」ということでお約束の「うつせば治るよ」とかのエロいネタをやりたかったのですが(笑)
あえてここはそうせずにクラ←ユフィにしてみました。
うちのコンセプトはクラティ←ユフィなんで、同志の方いらっしゃったら嬉しいな〜なんて。
クラ←ユフィのクラウドはひたすらカッコよく、カッコよく!!

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