ぎぃ、と扉が開いた。

黒髪の男は少し窮屈そうに肩を寄せて、それほど狭くない扉をくぐる。

ばたんと閉じた扉には「面会謝絶」の四文字。

 

 

09:Pure White Sight

 

 

不自然なほどに白い壁、白いベッド。

そのベッドに横たわる女が眠っていることを確認すると少し安堵する。

透けるような銀髪、白い肌。折れそうに細い手首を持ち上げてもぴくりともしない、今は薬で眠っている時間。

弱く打つ脈が、手首を握る手のひらに伝わってくるがそれもいつ止まるかわからない。

 

前ここにきたのはいつだっけ、指折り数えてみるがそれほど日は経っていなかった。

5回に1回はいい感じ、まるで後輩の射撃の腕のようだ、彼女の体調はそんな気分任せ。

閉じていた目がゆっくりと開く。今日はご機嫌なことを祈る。

 

 

 

 

はじめに来た時はイチゴを持ってきた。彼女は鷲掴みにつぶしてしまい、甘酸っぱい香りの中で狂ったように泣き叫んだ。

否、彼女はすでに狂っていた、俺が認めていなかっただけ。

こんな不自然なまでに白い病棟に入れられたときからそんなこと知ってたはずなのに、その窓に光る磨き上げられた銀の鉄格子も。

緋が彼女の嫌いな血を連想させるからとイチゴは没収された。

それ以来彼女の好きだった椿を見舞いに持ってくこともできなくなった。

 

次に行った時は白い指先に包帯が幾重にも巻かれていた。

爪を噛んでなくなってしまうからだと言う。

俺が尋ねていった時彼女は包帯を噛んでいた。

 

そっと抱き寄せても彼女は指先の包帯を噛むのをやめなかった、まるで俺なんかいないみたいに

 

彼女の瞳は俺を映してない、凍りついた瞳、あの日からあんたの時は止まっちまったんだ、涙が零れた。

 

 

せ つ な い 

 

 

任務中の事故で死んだあんたの恋人の遺体が回収されてきて、気丈に振舞っていてもあんたの心は徐々に壊れていって

軋んだ心を悪魔が襲った。

 

 

 

目覚めた彼女は見舞いに持ってきた色とりどりのマーブルチョコレートを筒から出して一粒ずつ床に並べている。

口元には弱い笑み、今日はご機嫌だ。昔のことでも思い出しているのかもしれない。

強い日差しを受けて淡い光を放つ銀髪をなでると、猫みたいに喉を鳴らした。

「レイ」

俺を呼ぶ名が違うのは切ないけれど、彼女が幸せならそれはそれでかまわない。

顔を上げると、陽の光が妙に目に沁みた。

 


THE BACK HORN「アカイヤミ」をモチーフに書いたけど、仕上がったら全然別物なのでお題に

06/03/14

 

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