013;The Midnight Broadcasting

 

夜遅く、物音のない空間。

ランプ一つつけた薄暗い部屋でTVのチャンネルをいじると、映し出される番組。

人気タレントの持ち番組、ショート・コント、深夜のニュース。

ふと、古い映画が画面に映し出されて。

全然知らない俳優に女優…きっと名もない俳優達だろう。

しかしなかなかの演技と、音楽と…気がつくと、クッションを抱えて見入ってる。

別に特別見たいわけじゃない。明日も早朝から訓練はある。瞼は、今にも閉じそうに重い。

眠気でふっと意識が飛んで、足元のマグカップを倒しそうになって我に返る。

けれど貴方の帰りを待ちわびて、無理をしてでも起きている。

『どんなに遅くなろうとも明日の朝までには帰れると思う』。

ソルジャーの制服に身を包み愛用の剣を携えて、彼は任務に出て行った。

『危ないから、迎えに出なくて良いよ。先に休んでいて』。

そんな事、出来るわけない。

貴方の無事を確認するまでは。貴方に一分でも一秒でも早く会いたいから。

…安心して、貴方の側で眠りにつきたいから。

こつこつと聞きなれたブーツの音がする。

気遣いながらそっと鍵をあけ入ってきた人物と目が合い、彼はにっこり笑った。

「何だ、まだ起きていたのか?」

「うん。…おかえり」

ぎゅ、と彼に抱きついて、ふと気づく。

今日も大きな怪我はなかった、彼は無事だった――――…温もりを、確かめる。

同時に、懐かしい彼の香水に混ざる、血の臭い…

この人は、今回どんな任務を受けおってきたのだろう。

優しいこの人はまた胸を痛めながら、それでも命令と割り切って手を血に染めたのだろうか。

映画の音楽と俳優達のセリフが、どこか遠くのことのように耳に響いた。

「ねえ」

見上げると、優しい瞳に吸い込まれそう。

「ん?」

「いつだってどんなに遅くなったって、待ってるから… だから、絶対帰ってきて。約束して」

彼は笑って―――答えた。

「当たり前だろ?」

仕事に行ったソルジャーが帰ってこないということ…ソレは即ち、そのソルジャーの「死」を意味する。

 

どんなに遅くたっていいから、必ず帰ってきて。

ずっと待ってる。

 

 


03/11/25

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