「…可哀想なヒト」
生まれ出でたそのときからずっと一人ぼっち。死ぬときもたった一人。
Mement Mori
「今は彼の気持ちもわかるような気がするの」
忘らるる都。今は奥深く、仲間の魂の眠る湖のほとり。
小さな花束を手にティファはそっとつぶやいた。
「どういうことだ?」
ティファの言葉にクラウドは眉を寄せた。
「彼の…セフィロスの気持ちも、みんな終わった今なら、判るような気がする」
ざぁ、と流れるような風が湖面をなぜて、木々の枝を踊らす。
風に煽られてティファの長い黒髪も踊った。
「生まれた時から、きっとずっと彼は一人ぼっちだったのよ。ただ、プロジェクトの被験体として育てられて、軍では英雄として祭り上げられて…」
「……」
「親の愛情は受けられたかしら?信じられる友達っていたのかしら?心を許せる恋人は?…そんな風に考えたら」
ティファはそこで言葉を止めるとクラウドの方を振り返った。
鳶色の視線と、蒼い視線が重なる。クラウドは首を振った。
「…ティファ。でも、」
ティファはうなずいた。
「わかってる。彼のやったことはだからって許されるようなことじゃないわ」
今はただ蒼い湖面をティファの鳶色の瞳がいっそう色を深くして見つめる。
そう、この湖に眠る彼女は―――エアリスは、他ならぬセフィロスの手によって命を絶たれた。
他にもセフィロスの手によって奪われた命、いのち、イノチ…
「でも、でもね、クラウド。本当にずっと孤独で、心が傷つかないはずがないよ」
一人ぼっちで大丈夫なんて、そんな人間いるはずないのに。
「きっと苦しかったと思う。だから、彼はあんな風になってしまったのかなって」
冷たくて残酷だと思ってた瞳。けれどその瞳は本当は寂しさと孤独の入り混じった色。
どこかで助けを求めていたのかもしれない。
一瞬風が止まり、静寂が流れる。
「…わかっていたら、それが、ずっと前にわかっていたらもっと違う風に出来たんじゃないか、って今は思うの」
ティファは持っていた花束の花びらをそっと摘むと、閉じた手のひらを開いた。
握られていた紅い花びらが風に乗って舞う。
「あいつは」
ティファの背を見つめていたクラウドが口を開く。
ティファが振り返る。長い黒髪をたなびかせて。
「あいつは、ライフストリームとひとつになった事で、ようやく解放されたんじゃないかと思う。だから、これでよかったんだと俺は思いたい」
風で柔らかい金髪が揺れた。あれほど憎くて仕方なかった男のことをこう思えるようになったのも、時間の力なのかもしれない。
或いは、目的を、仇を取り命を奪うと言う目的を果たすことで初めて、冷静になれたのか。
ティファは目を閉じ、静かにうなずいた。
「…うん」
もし…だったら、とか、もし…していれば、なんていうのは結局は自分のエゴだとよくわかっている。
セフィロスに対して、小さな罪悪感があることから逃げたかっただけかもしれない。
「ライフストリームは、エアリスはセフィロスを受け入れてくれたかしら?」
「ああ、おそらく」
星に生きて星に帰る。また星から生まれ、星に生き、星に―――
「…いつか、また」
会えると思う、その時には。
何が言いたいのかよくわからなくなってきた
05/08/21
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