優しくなんてしないで
一度決めた決意が鈍るでしょう?
「私、クラウドのことキライになったの」
真ん丸いあひるの縫いぐるみに向かって、…本当は自分に向かって…何度この言葉を繰り返しただろう。
そう、全ては自分が楽になるためのずるい嘘。自分に言い聞かせるように。
貴方は不器用だけど誰にでも優しい。
だから、みんな貴方についてきたし、みんな貴方を慕ったわ。
優しいあなたが、大好きな貴方がみんなから好かれるのはとっても嬉しい事。
だけど、そんな貴方を私だけの特別な人にしたいなんて、そんな我儘言えない。
みんなに好かれるのはとっても嬉しい。でも、誰もが貴方を好きなのは苦しい。…妬けてしまうから。
だから貴方のことキライになったって、一生懸命自分に暗示をかけて。
キライになって苦しみから抜けようと、そう決めて。
でも貴方と一緒の時は、少しでも綺麗に見えるように丁寧にメイクして、髪を梳いて。
少しでも素敵な女性らしくいようと頑張って。
そんな自分がいる。
でもそんなのおかしい、貴方の事キライになろうって決めたのに。
私何やってるんだろうって、貴方の事をキライになるって決めた私が顔を出すと、私は素直になれなくなる。
モンスターとの戦闘中に怪我をした私に、クラウドがそっと手を差し伸べる。けれど私はその手をとらなかった。
「どうした?大丈夫か?」
逆の手で押さえた肩からは赤い血が流れ落ちる。思ったよりも鋭い爪で裂かれた傷は深い。
「…痛むか?」
回復のマテリアを取り出すクラウドを軽く静止する。
「…自分で出来るわ。大丈夫」
「でも」
そっとマテリアに魔法力を込めるクラウドに私は言った。
「クラウド、私に優しくしちゃダメ」
クラウドの魔晄の瞳が僅かに憂いをたたえて首をかしげる。
「どうして?」
「…どうしても」
だって。
優しくされたら決意が揺らいじゃうわ。
立ち上がって、離れて治療しようとする私の手をクラウドがぐっと掴む。
「だってティファがそんな顔してるから…心配だろ?」
とくん、と心臓が跳ねる。
普段は不器用で鈍いのに、急にそういうことを言うから、私がいつまで経っても踏み切れないのよ。
そんな風にクラウドのせいにして。
もうちょっとだけ好きでいてみようかな、なんてまたずるい事を考えてしまう。
スス様 リクエストありがとうございます ちょっとスカイブルーとは雰囲気が違いますが いかがでしょうか。。。
05/01/27
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