世界を平和にするために私が来たと思うな。
私は世界に剣を投げ込むために来たのである。[マタイ10−34]

 

LUNATIC PANDORA

 

パンドラの匣(はこ)を開けてはいけない

中には災いが詰まっているから

思えば災いは俺自身だった 星を壊す厄災という名の災い

 

繰り返される実験 何度も飲まされた得体の知れない薬

何となく気付いてた 自分が”フツウ”ではない事に…

 

愛する事も知らず 愛される事も知らなかった。

 

 

『おい見ろよ!宝条博士の化け物息子だぜ』

『可哀想にな。あの人の息子に生まれたのがあいつの最大の不幸だよ。

あの人に取っちゃ息子も実験器具も一緒さ。

 

あいつの事息子だなんてこれっぽっちも思っちゃいないぜ』

俺を指し嘲笑う大人たち。

 

そうだ 俺だってあんな奴父親だなんて思っちゃいない。

そう思うことでしか幼かった俺は自分を守れなかった。

 

『…ひとつ質問があるんだ』

父に可愛がられた記憶は無い。

母もいなかった。

『何だ』

『俺の母さんってどんな人だった?』

父はクックッと陰気な含み笑いをした。

それが父の癖だった。

『そうだな… 名は…そう、”ジェノバ”だ』

父はそれだけ答えた。

俺は素直にそれを信じた。

 

『ジェノバ…ジェノバか。俺の母さんってどんな人だろう。

髪の色は俺と同じ銀なのかな。優しい人だったろうか』

父親に失望していた分 俺の母に対する憧憬は強まった。

 

だが俺自身気付かなかった。

父を嫌いながらも本当は愛されたいと願っていた事に。

いつも父の研究室のそばを歩き回り、呼ばれるのを待っていた。

俺を見て欲しかった。

 

だがそんな望みもいつかは尽き果てる。

 

『クックック…』

父の癖のある笑い方。

冷たい鉄の扉に隔てられた扉の向こうに父の姿が見えた。

俺はこっそり聞き耳を立てていた。

『見ろ!この数値を…まるで化け物だこいつはすごい!最高の実験体だよあいつは…クックック…』

 

バ ケ モ ノ

 

俺の中で何かが音を立てて崩れた。  

あいつにとっては俺も檻に入った実験動物<モルモット>と何ら変わらぬ存在だったのだ。

心の底で父を求めていた事を俺は恥じた。

 

――――――同時に俺は心を失う――――――

 

俺ハ何者ナノダ?ヒト ナノカ バケモノ ナノカ?

答えは秘められた匣に入っていたはずだった。

知っていながら長い事俺は匣の中を 答えを見ないふりをして生き続けてきた。

匣の中には災いが入っているから…

 

 

匣から飛び出した狂気は街を焼き、仲間を殺し。

そうして俺の耳もとで囁いた。

『お前は選ばれし者 この星を愚かな人間どもから取り戻す為に生を受けた』

 

匣の底に残った希望は俺に何をもたらすのか…

 

――――――神よ  狂ったこの俺に裁きを


セフィも宝条もホントはお互い不器用だっただけなんじゃないかと思い。

03/03/29|04/07/29加筆

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