お前だけには。
キリング・ドール
簡素なデスクの上に置かれた1通の手紙。
「ソルジャー昇格試験―――――『不』合格」
クラウドはもう、結果がショックだったのか、俺に悔し涙を見せたくなかったのか、早々と布団にもぐりこんだ。
もう一度俺は、その結果を手にとって見てみる。確かに『不』合格だ。
あんなにも必死に頑張っているクラウドの落胆する姿は見たくない――――けれど、それをみて安心する自分も何処かにいるのは間違いない。
だってそうだろう?
不器用だけど優しいお前には俺のようになって欲しくないから。
お前にだけは知られたくない俺の姿。俺は有罪…
「今日は何人?」
「…11」
「すげぇ。2ケタ行ったか」
当たり前のように宿営地でかわされる会話。
数なんて関係ない、戦場で手柄だったとしてもそれは人殺しには変わりない。
それが俺達にとって「多少」の犠牲だったとしても死んじまった連中にはそれが「全て」だったんだ。
事実を見ないように考えないように、だんだんと感情が死んでいく。罪の意識が薄れていく。何も感じなくなる。
殺人人形<キリングドール>。
こんな俺達の事をそう例えたのは誰だったっけ。
ああ。
「随分と的を得た言葉だ」
自嘲的に昏(くら)い笑みを浮かべていたのはあいつだった。
男にしては綺麗過ぎる容貌、その裏に隠された冷徹さと残酷さ。
ひときわ目を引くのは「銀髪鬼」と異名を取るほどのその長い銀髪。
「人形は意思など持たない、命令されるままに人を殺す」
粉々にされた肉塊にもたしかに温もりはあったのに、と何も見えない窓の外を眺めて呟いた。
だが俺達は人形じゃない、声高くは上げないが奴の上げた静かな、精一杯の叫び。
銀髪鬼の心の悲鳴がお偉方に届いたかどうか。
ソルジャーは誇り高い戦士なんかじゃない。
ヒトをゴミのように蹴散らしてその屍の上で勝鬨(かちどき)を上げている可哀相なキリングドール。
お前にはそんな風になって欲しくないから。
だから。
拗ねたように眠っているお前を見て、それでも俺はそれを嬉しいと思ってしまうんだ。
戦争の本質。
04/09/14
郁様→リクエストありがとうございますvvザックスメインで、切ないかダークということでしたので
ダークの方で行かせていただきました。(暗くなりきれていないけど…)
やっぱりそういう職業にこういう葛藤はつきものなのではないかと、あくまで想像なのですが。
リクエスト頂けて嬉しいです。これからも宜しくお願い致します。
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